« 2019年5月 | トップページ | 2019年7月 »

2019年6月

2019年6月25日 (火)

威張って言うほどのことじゃないですが、そのお金ならもう払いましたぜ

お昼時の吉野家はすごく混み合っていた。

僕はかろうじて空いていた小さなテーブル席に座り、鯖みそ牛定食を注文してトイレに向かった。

しまったなー、人が多いし結構待つことになりそうだなー。

そんな事を考えながら用を足して席に戻った。

あれ、思ったより早い。

しばらくすると、注文した料理が運ばれてきた。

少人数のスタッフしかいないけど、テキパキと要領よく仕事をこなしているからスムーズに流れているんだろう。

ご飯をかき込みながら、僕はスタッフの動きを見ていた。

仕事が早いだけじゃなくて、接客対応も丁寧だ。

その流れを継承してなのか、お客さんの回転もスムーズだ。

素晴らしい。

かといって、みんなせかせかしているというわけじゃなく、老夫婦に関してははゆったりと食事を楽しんでいる雰囲気もある。

強要された雰囲気が全くない。

なめらかに穏やかにスムーズだ。

これはなかなかレベルが高い。

僕はすっかりこの雰囲気を気に入ってしまった。

そして僕はこのスムーズな流れにさりげなく貢献できたらと思い、あらかじめ財布から会計金額を取り出し、レシートは結構ですとスマートに告げ、何事もなかったかのようにスムーズに会計を済ませることで僕自身ベストな一日が送れるはずだ、と作業ズボンのサイドポケットに手を入れた。

しかし、ない。

ない。

ない。

ないのだ!

あるはずの財布がないのだ!!

何でだ。

何でねーだや。

しかしここでここで慌てないのが素敵な大人のおじさんだ。

落ち着け俺。

店内を見渡し、気持ちを一旦財布から遠ざけてることにする。

うーむ、店員さん変わらず無駄のないテキパキした動きだ。

素晴らしい。

いいねー。

いい感じだ。

さて、そろそろ財布を取り出そうかな。

再びポケットの中に手を入れる。

だが、ない。

まー、あるわけないわな。

ないのはわかっているけど、ポケットを叩いてみる。

往生際が悪い性格に苦労する。

手のひらに太ももの感触が伝わる。

と同時に太ももに手のひらが当たった感触が伝わる。

ポケットは空っぽなわけだし当たり前だ。

うーむ、どうあがいても財布がないという現実は曲がってくれないようだ。

「あっ…!」

とその時、家のテーブルの上に置いてあった財布の映像が脳裏をよぎった。

そうか、朝財布を持って出るのを忘れてたんだ。

ツーっと粒の大きい汗が身体のラインを舐めるように滴り落ちる。

さて、今からこの店を出るためにはお会計をしないと出れないわけだけど、全く手元にお金がない。

で、どうすればいいんだっけ。

わからない。

40年近く生きてきたけどわからない。

入り口には入店待ちのお客さんが並んでいる。

どさくさに紛れてそのまま出て行けばいいのかな。

いや、ダメでしょうな。

新婚早々そんなことして捕まったら離婚されても仕方ないわな。

そうなったら母親は泣くわな。

俺も泣くわな。

多分兄も泣くわな。

意外とここは人生の分岐点なのかもしれない。

どこに人生の分岐点が潜んでいるのか分からないもんだな。

困ったな。

困った時は相談だ。

そうだ、とりあえず店員さんに相談しよう。

しかし、相変わらずテキパキと無駄のない動きで仕事をしているので声をかけるタイミングがない。

それでもちょっとくらい話せるタイミングがあるだろうと、店員さんの様子をそれとなく伺う。

お客さんが食べ終えた食器のお盆を両手に持っている…今じゃないな。

注文した料理を運んでいる…今じゃないな。

お会計をしている…今じゃないな。

うーむ…。

仕事が完璧すぎて全く隙が、無駄が、ないじゃないか。

それはそれで困るじゃないか…。

もうどこが負担のかからないタイミングなのか分からない。

店員さんが注文を取りに水を持って少し早歩きでお客さんのテーブルに向かっている。

今がチャンス!!

だと思う。

 

「すいません!」

スクッと立ち上がり声をかけた。

「はい」

「あの、財布を忘れてしまったんですけど、どうしたらいいですか?」

「あ…」

「ちょっと家に取りに帰ってきてもいいですか?」

「え…

少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか」

 

店員のお姉さんはそう言ってお客さんの注文を取りにいき、その後僕の不安を取り除くような声で「大丈夫ですよ」と紙切れとペンを手持ってやってきた。

その紙に念のため名前と連絡先を書くように言われ、僕は急がなくてはとペンを走らせた。

しかし、焦るとかえって手間取ってしまうものだ。

急ぐと焦るは似て非なるものだ。

0を書き損じて書き直したのが、6なのか0なのか8なのかなんなのか分からない数字になってしまったので、その部分に矢印を引っ張って、これは0ですけん、とスタッフのお姉さんに説明しながら0と記入し、大切な時間をロスしてしまった。

しかしそんなどんげなおじさんに対しても丁寧に大丈夫ですよと声をかけて頂き、恐縮し「すいません、じゃあちょっと急いで取りに帰って来ますけん」と伝え僕は入店待ちをしている行列を、対抗車線を逆走してしまった老人ドライバーのような気分で「すいません、すいません」と掻き分け掻き分け店を出た。

 

なんで、財布を忘れただーかなー。

何でだーかなー。

家までの道中独り言を呟きながら、なんでこんなことになってしまったのかをずっと考えていた。

 

 

先月25日のイベントは楽しかった。

色々な意味でスケールアップしたモヤ君のカラーリングがとても素敵なライブペイント、うつみあいちゃんの内蔵の隅々まで染み渡る歌声、APACHE君の華やかなDJ、ニューアルバムを引っ提げ一体感が増しパワーアップしたMOTORSのパフォーマンスとサプライズソング、THE COMIN'のはち切れんばかりのエネルギーで会場が満たされた夜だった。

数日前に急遽歌うことになり僕もオープニングでギターを弾いて4曲歌った。

内2曲はジュンちゃんにベース、テナーサックスと歌で由利君にも入ってもらった。

みんなで演奏するのは懐かしいというより、新鮮だった。

また一緒に演奏する日が楽しみだ。

 

「地獄見てかな〜い?」

「お化け屋敷のぞいてかな〜い?」

 

打ち上げの後、ダイゴウくん、由利君、千ちゃん、あいちゃん、僕、奥さんで通りを歩いていると、白髪のお目目ぱっちり化粧の濃いおばあさまなのかおじいさまなのか、おじいさまなのかおばあさまなのか、どちらとも言えないなんとも魅惑的な方の魅惑的な言葉につられてとある雑居ビルの二階の店に入った。

そこは70オーバーの前期高齢者のスタッフがメインのオカマスナックだった。

「お兄さんエロい顔してるわね〜。

タイプだわ〜」

とネネさんだったかベティちゃんだったかに僕はなんどもなんどもなんどもなんどもなんども言われ、普段そんな嬉しいことを言われたことがないので上機嫌になった。

みんなそれぞれカラオケを歌う。

その後サービスでこれまた何とも言えぬ魅惑のショウを見せて頂く。

何だかものすごく楽しかった。

という印象は残っているけど、ショウの内容は酔っ払ってあまり覚えていないので近々また見にいこうと思う。

久しぶりに遅くまで楽しいお酒を飲んだ。

 

イベント翌日はモヤくん夫婦とあいちゃんと、境港観光をした。

色々な話をしながらのドライブや鬼太郎ロードは楽しかった。

モヤくんはこの後バンコクで仕事だったり、あいちゃんもフィリピンへと、これからの活動の話をしてくれた。

夜はケイ君夫婦とあいちゃんと僕ら夫婦でホルモン焼き屋さんで楽しんだ。

みんな来てくれてありがとう。

 

Mes9dynsesrswphjr8kq 

 

そして今回イベントを開催するにあたって色々な人にお世話になりました。

準備の段階では、色々とラフズの店長藤原さんには丁寧に相談にのっていただき大変お世話になりました。

フライヤー制作に関しては本当にMOTORSのあっちゃんに骨を折って、これまた大変お世話になりました。

フライヤー配りはイベントへのモチベーションが上がって楽しかった(松江方面に同行していただいた奥田さんありがとうございました)。

タカシがモヤくんのライブペイント用に精度の高い土台を作ってくれて、大助かりだった(ほんとに忙しい中ありがとう)。

みんなの気遣いが行き渡っていて、イベント自体もスムーズに流れて無駄な心配もなかった。

歳をとってから、こういうイベントをするのは思った以上に楽しいということを知った。

と同時に至らぬ点、足りないことも色々と痛感した。

バッチを買ってくれた方ありがとう(もっと売れると思ってたんだけどな!)。

見に来てくれた皆さん本当にありがとうございました。

 

このイベントを企画してから本番が迫るにつれ、いつもの日常生活に亀裂が入りそこから違和感(のようなもの)が少しずつ込んできたのを感じた。

それはどこか懐かしい感覚だった。

違和感が入り込んだ事で眠っていた細胞が目を覚まして、日常生活に張りと潤いが出て来たんだろう。

こういうのはいいなと思った。

しかしこの違和感は思った以上に僕の日常に浸水していたようで、気がつけばパンツまでビショビショだった。

だから僕は、財布も持たずに呑気に牛丼屋で飯を食べてしまったんだろう。

 

しかしそれでもいいことがあった、と日が経ち気づくことがあった。

上手だったり、下手くそだったり、スムーズだったり、ぎこちなかったり、感動的だったり、拍子抜けしたり、ウマがあったり合わなかったり、肌が合ったり合わなかったり、期待通りだったり、期待通りじゃなかった、としても、恋をしたらその気持ちを大切な人に伝えるんだよ、というシンプルな人生のテーマを思い出すことができからだ。

恋は人や物だけにするものじゃなかった。

今回伝えきれなかった想いはまた伝えよう。

また懲りずに歌っていこう。

腹筋ローラーを買ったし腹筋ローラーも頑張ろう。

そしてまずは吉野家の店員さんにお金を払って、すいませんでしたと伝えるところから始めよう。

Img_2745 

photo by Nobuya Fuke

 

| | コメント (0)

« 2019年5月 | トップページ | 2019年7月 »